ゆっくり、行こうや
2011年 10月 15日
働き出してすぐの頃の私はエネルギッシュでフレッシュだった。
そして、「メンバーさん(利用者)の為に頑張るぞ!」と意気込んでいた。
重症心身障害者の方の手となり足となり、慣れない身体介助に奮闘する毎日だった。
そんな春のある日、施設のメンバーさんと散歩に出ていた。
車椅子ユーザーで手足に麻痺がある方で、私より3つ歳下(当時19歳)の男性の方。
私が車椅子を押しながら近所の散歩をしていた。
一生懸命な私は「車椅子の押しごこちはだいじょうぶだろうか?」「楽しい会話は出来ているだろうか」などなど気を使いながらの散歩だったように思う。
すると、メンバーさんが「止めて」と言った。
私は「どうしたんだろう?」と焦る。
彼は麻痺がある手で道の脇を指差し、一言。
「てんとう虫やで」
そして、「ゆっくり行こうや」と声をかけてくれた。
散歩中に関わらずメンバーさんとの活動中、私は「メンバーさんのサポートをすること」ばかりを考えていて、メンバーさんと活動を楽しむことが出来ていなかったのだろう。
春に散歩をすると、花も咲いているし、虫もいる。
散歩中に散歩を楽しまず、サポートすることばかり考えている私に、歳下のメンバーさんが教えてくれた。
それから、私は肩の荷が下りた気がする。
自分で勝手に背負っていたものだが。
この時の歳下の彼とは、今でも繋がっている。
先日は「事業所を立ち上げる」ことを伝えたら、「ヘルパーさんおらへんで」と心配してくれた。
今の私は肩の荷が下りているだろうか?
「地域福祉の為に!」と意気込んで、勝手に重荷を背負っていないだろうか。
私は、ついつい背負ってしまいがち。
彼の言葉通り、「ゆっくり行こうや」の気持ちで進んで行きたいと思う。